なぜ私の歯は神経を取られた?

歯医者に関する知識

はじめに

こんにちは。

歯が痛くて歯医者に駆け込んだら、「あーこれ神経取らないとだめですね」といわれ、何回か歯医者に通うことになってしまった方、いらっしゃるのではないでしょうか。

今回はこの「神経を取る」というのがどのような治療なのか、なぜそんなことをしなければならないのかを解説していこうと思います。

むし歯の分類

神経を取る処置の説明をする前に、むし歯の分類について説明していきます。

むし歯は、歯の中でどこまで広がっているかによって分類がされています。

歯の構造図です
出典:httpsantenna.empower-column01.comwp-contentuploads201806cross-sectional-view-of-tooth-1024×849.jpg

歯というのは、表面から順に「エナメル質」、「象牙質」、「歯髄」という構造物を持っています。人体の中で最も硬い構造物であるエナメル質で表面を覆い、その内側に象牙質というエナメル質よりはすこし軟らかい組織があり、そのさらに奥、歯のコアにあたる部分に歯髄という構造物を持ちます。この歯髄というのが歯の神経そのものです。

この神経は歯の根っこの先から骨の中へ伸びており、たどっていくと脳や脊髄に行きつきます。歯にかかる「熱い」、「冷たい」、「痛い」という感覚を脳へ伝えるケーブルの役目を果たしているのです。

むし歯になると、これらの構造物が細菌に侵されていきます。むし歯の原因菌は歯の表面サイドから侵入していきますから、むし歯の深さは「エナメル質のみ」、「象牙質まで」、「歯髄まで」の順にひどくなっていくということになります。これにそれぞれ「C1」、「C2」、「C3」という名がついています(「C」は「Caries = むし歯」の頭文字です)。

分類ごとの治療法

では、なぜこのように分類がなされているのでしょうか。
それは、この深さの度合いによって治療法が異なるからです。

  • C1 (エナメル質までの場合)
行ったり来たりしなくて済むよう、おいておきます

むし歯がエナメル質までしか到達していない場合は、基本的には経過観察とします。
エナメル質でむし歯の進行が止まっている場合はしっかりと歯磨きを継続することでそれ以上の進行を食い止めることができ、症状もないことが多いからです。

「むし歯っぽいけど削るほどじゃないから歯磨きがんばってね」と歯医者に言われたときは、大体この状態であることが多いです。

エナメル質のみのむし歯にはフッ素も有効です。↓

過去投稿:【フッ素って何なん??

  • C2(象牙質までの場合)
念のため、おいておきますね

むし歯が象牙質まで進行している場合、「冷たいものでしみる」、「噛んだ時に違和感や鈍痛がある」等の症状が出ることが多く、歯磨きでコントロールできる深さではなくなります
この深さになったと判断された場合は、削って詰める処置を行うことになります。

具体的な治療法はこちらを参考に!↓

過去投稿:【むし歯はこうやって治療します

  • C3(歯髄までの場合)
念のため、、、

歯の痛みを脳に伝える歯髄までむし歯が進行した場合は、歯髄に激しい炎症が起こります。ですので、「激しく痛む」「何もしなくても痛む」という大変しんどい症状が出ることになります

ケーブルが直に刺激されてるので、当たり前ですね、、、。

ここまで進行すると、削って詰めるでは済まなくなってしまいます。

具体的には、「脳へつながっているケーブルそのものをちょん切る」という方法を取ります。
脳へ刺激がいかなければ痛みはなくなりますからね。つまり、これが「歯の神経を取る」という処置になります。

歯の神経は図の通り、歯の根っこの先まで続いていますから、歯の根っこの先まできっちり神経を取る必要があるため、何回かに分けて治療を進めることともあります。これが「むし歯が神経まで届いていたせいで、治療に何回か通う羽目になる」理由ですね。

そこまで痛みは強くないけど神経を取られたんだが、それは、、、?

ここまで読んでいただいた方の中には、「あれ。自分神経取られたけど、そこまで痛み強くない気がしたけど。これはやられたか?」という方もいるかもしれません。

安心してください。痛みがきつくて歯医者に駆け込んだわけではないのに神経の治療になってしまう場合もあります

解説していきます!

  • むし歯の大きさがC2とC3のボーダーだった
さすがにしつこいですか?

まず考えられるのは、むし歯の大きさが象牙質と歯髄の境界くらいだった場合です。そのような場合、症状はそこまで出ていないけどむし歯自体は歯髄に到達している、ということもあります。その際は、「痛みはそこまで出ていないけど神経を取る」という治療になることがあります。

逆に、このような場合だと、「神経にかなり近いですが、一度詰めて様子を見て症状がなければそのままにしましょう」というような処置にする歯科医もいます。

  • 歯髄が完全に細菌に侵され切ってしまっていた
、、、。

次に考えられるのは、歯髄が細菌に完全にやれてしまっている場合です。

歯髄は細胞でできています。細菌に侵され、免疫が敗北してしまうと、歯髄を構成する細胞が死滅し、脳に感覚を伝えるという機能そのものが失われます

ここまで進行してしまっていると、患者さんからは「痛みはなかったけど、神経を取ることになる」というように感じることがあるかもしれませんね。

ただ、このような場合でもその死滅した神経は取ります。
死滅した神経は細菌感染を起こしているため、そのまま放置していると歯の根っこの先から周囲の骨に感染が広がる可能性があるためです。

  • 痛みを感じにくい体質だった

これを言っては元も子もないと思われる方もいるでしょうが、これは実際にあります。やはり、痛みというのは個人差が大きく、ここまで広がってるのに痛くないの!?という方もいれば、そこまでむし歯はひどくないけど痛がる方もいます。

歯医者側の客観的なデータから下す診断と患者さんの痛みの感じ具合というのは、しばしば一致しないことがあるのです

おわりに

ということで、ここまで「神経を取る治療」にフォーカスして説明してきました。お読みいただいてありがとうございました!

このような記事が見たい等ありましたら、コメントにお願いいたします!

OWNER:MAKOTO

東京医科歯科大学卒 現役歯科医師

音楽とか服あつめが好きです

詳しくは、プロフィールページをご覧ください。

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